圭秀の修行日記平成26年11月10日

永源寺28世晋山結制式を終えて

 十一月九日の晋山式当日、永源寺に入る前の安下処(あんげしょ)にて、安下処諷経(あんげしょふぎん)が終わる午前七時三十分頃からあいにくの雨が降り始めました。 その為、午前八時出発の晋山行列は、百五十メートルほどの大小様々な傘の華が連なる中を永源寺の山門へと向かうことになりました。 慌てたのは永源寺にて法要の準備や案内をすべく待機されていた御寺院、寺役員、世話人、業者の方々です。皆様は、急遽山門から本堂まで雨よけのテントを張る作業に追われました。 また、雨の中を行列で歩いていたお稚児さんたちの頭も衣装も、永源寺に到着する辺りにはかなり濡れてしまい、到着後に予定していた記念撮影ができない状況でした。 そのような次第で、法要の流れを調整しなくてはならなくなりました。

 ところで、興福寺(奈良市)横にある猿沢池についてのこのような歌があります。
手を打てば ハイと答える 鳥逃げる 鯉は集まる 猿沢の池
 猿沢池に隣接する宿に泊まっている者が、その宿の女中さんを呼ぼうと手を叩きます。 女中さんはハイと答えますが、木の枝にとまっていた鳥は手を叩いた音で驚いて逃げてしまいます。 しかし池の鯉たちは、その音が餌を蒔いた時の音に聞こえるのでしょう。 徐々に集まってきた様子を詠んだ歌です。 一度手を叩くだけの動作でも視点を変えてみるといろいろな捉え方ができるという意味です。

晋山式での天候は朝からあいにくの雨となりましたが、そのことでこの儀式に協力頂いた皆様方の力がさらに結束されるに至り、私にとってこの上ない喜びとなりました。高祖様(道元禅師様)は寛元二年(一二四四年)に傘松峰大佛寺を建立され、寛元四年(一二四六年)に山号寺号を吉祥山永平寺と改められました。奇しくも晋山式当日に多くの傘に私自身が囲まれるのは有難いことだと思った次第です。

西堂老師をはじめ、教区御寺院並びに法縁各御老師、永源寺役員や世話人を中心とする檀信徒の皆様、業者の皆様、そして、陰に日向にご協力をしていただいた方々にはお礼の言葉を言い尽くせないほど感謝の気持ちで一杯です。高祖様をはじめとする祖師方や、皆様方の大恩に少しでも報いることができるよう、法灯を絶やすことがないように研鑽と修養につとめて参る所存ですので、今後とも御指導御鞭撻を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。



御寺院中心の集合写真


役員檀信徒中心の集合写真


稚児中心の集合写真

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