圭秀の修行日記平成26年6月24日

「家業を継ぐ」の取材裏話

 永源寺は、年に一度8月に「鹿苑(ロクオン)」という寺報を発行しています。 平成元年から発行しており、今年で26号となります。 寺の歴史や行事報告、当寺24世岸沢惟安老師の講話や檀信徒が参加した研修会感想文、寄せられた俳句などを掲載しています。 私が原稿依頼や取材、編集、校正をしておりますが、時期が盆行事と重なることもあり、7月中旬から8月にかけては時間に追われながらの作業が続きます。

 新聞記事の中に「家業を継ぐ」という連載があります。 これは、養父市八鹿町に今も営々と息づいている先祖代々伝わった伝統的な稼業の一端を紹介しながら、生き生きと仕事に打ち込まれている檀家さんの姿を、私が取材して掲載しているものです。 今までに、印刷所、花店、クリーニング店、飲食店、菓子店、自動車販売店、呉服店、医院、建材店、瓦店、工務店など、業種を問わず掲載させて頂きました。

 今振り返ってみますと、取材を始めた当初は頭を抱える日が続いたことを覚えています。 取材は各業種にわたるためその業種の専門用語が分からず、先方が伝えたいことを正確に理解できないことがありました。 そのため取材時間は長くなり、また活字に起こすまでにも時間を要しました。 出来上がった原稿をそのお店の経営者に確認して頂いた際、趣旨説明の違いや表現方法の違いなど、数多くの訂正箇所を指摘されたことを覚えています。 数年間このようなことが続いた時には、この連載を止めてしまいたいと思ったことがありました。 しかし、新聞の発行を続けられるのも檀家さんの協力があってのことだということを思い出し、その都度取材方法を変えながらなんとか続けて参りました。

 最近になってようやくそのコツが分かってきたのか、取材時間が以前に比べ短縮された様な気がします。 と同時に、この取材の継続により、青森県出身で但馬地方のことについては殆んど無知だった私は、養父市やその周辺地域の土地、歴史、人のつながりや移り変わりを徐々に知ることができました。 そして、各時代の経営者が家業の存続の厳しい時代にどのようにして受け継いでこられたか、どのような工夫や決断をされてきたか、このような話を直接聞く機会を得られることは、寺をまもる私においても非常に勉強になっています。 拙い取材記事ですが今後もこの活動を続けながら、仏教界においても仏事の在り方が急速に変化しつつある流れの中で、よりよい寺の在り方を模索してゆきたいと思います。


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