圭秀の修行日記2012/03/25

はじめての典礼

 3月24,25日の両日、宝塚市にある仏光山喜音寺(ブッコウザンキオンジ)において伽藍落慶式、晋山結制式(シンサンケッセイシキ)、退董式(タイトウシキ)等の各法要が執り行われました。 喜音寺九世戸田老師が住職位を退き、代って越賀得之師が十世として新しく任命されたのです。
 新命(シンメイ※)さんと私の関係はというと、私たちは共に平成15年に大本山永平寺(エイヘイジ※)に上山しました。 そこで共に励まし合いながら辛い修行生活を送った仲です。 私が修行による疲れから風邪を引いて延寿堂(エンジュドウ※)で寝込んだ時も、新命さんが枕元に温かい食べ物や飲み物をそっと置いて下さったことを今でも覚えています。 そのような縁もあって、私は晋山結制式では典礼という役を仰せつかりました。 典礼という役は、私にとりましては初めてのことでした。

 法要は24日の午後から始まりました。 先ず行われた伽藍落慶式では、海久寺御住職が導師をつとめられ、ご本尊への開眼法要が厳修されました。 改築された伽藍は、京都大学大学院教授により設計されたものですが、とてもモダンな建物で、初めて喜音寺様を訪れた人にとっては寺院だとは思われないような外観を呈しています。 本堂前には広々とした池があり、また本堂床下には収納スペースが設けられ、畳を上げると座布団を収められるようになっていました。 山々に囲まれた永源寺と住宅に囲まれた喜音寺様は同じ兵庫県内にありますが、環境の違いで伽藍の様子がこれほど異なるのかと驚いてしまうほどです。 その後の各法要も好天にも恵まれたこともあり、予定通り滞りなく進みました。 二日間の大法要を全て終えると新命さんはじめ、随喜御寺院、親戚や檀信徒の皆様は安堵の表情を覗かせていました。

 私は、今までにも他寺における晋山結制式をお手伝いさせていただいておりましたが、大体、殿行(デンナン※)という役についていました。 しかし、この度の晋山結制式では典礼(テンレイ)という配役を仰せつかりました。 一般に典礼とは、定まった儀式・儀礼、あるいはこれを司る役のことを意味しますが、法要配役における典礼の役目は法要解説や司会進行が主となります。 典礼のことを都監(トカン)と、違う呼び方をする地域もあるそうです。 私は初めて典礼をつとめるに当たり、法要の流れを確認すべくいくつかの解説本を読み漁りました。
 当日私は、各法要の解説から休憩中の案内、法要後の記念撮影、記念撮影後の祝斎に至るまで司会進行をつとめさせていただきました。 法要中に御寺院の発言や、詠讃歌が奉詠されている場合、差し障りのないように解説を入れ、逆に堂内がシーンと厳粛に静まり返った中での解説は、その雰囲気を壊さないように心掛けました。 法要初日は緊張のあまり早口になったことがありましたが、各法要をつとめるうちに緊張の糸は解れ、自然と解説中に間を取れるようになりました。
 今まで殿行の役をつとめることが多かったので、各法要の準備する物や知識はありましたが、今回初めて典礼をつとめ、二日間にわたる儀式全体の流れを勉強することができました。 ご指導頂きました随喜御寺院に深く感謝すると共に、この経験を土台にし法式の勉強を積み重ねてゆこうと思います。 喜音寺方丈様、東堂様、随喜御寺院、親族、総代長をはじめとする檀信徒の皆様、益々のご健勝をお祈りいたします。

新命  : 新しい住職
永平寺: 福井県吉田郡永平寺町にあり、曹洞宗二大本山の一つ。道元禅師開山。
延寿堂: 病気の僧侶が療養のために休養する部屋
殿行  : 仏殿のことをつかさどる者の下にあって、手助けをし、身の回りの世話をする役の名
喜音寺本堂

戻る