圭秀の修行日記2010/07/22

「いただきます」の心

 7月21、22日の二日間、但馬曹洞宗青年会主催「小学生のための禅の集い」が行われました。 男子40名、女子44名、合計84名の小学生が、隆国寺(豊岡市日高町)様にて坐禅や読経をはじめ、掃除や食事作法にいたる生活体験を通して禅に触れる機会を持ちました。 そのかたわら、神鍋高原でのプール遊び、勾玉作りなどのレクリエーションを通して交友の輪を広げました。

 私は、平成13年からこの集いのお世話をさせていただいております。 例年、本堂での読経や坐禅指導などをつとめ、悪戦苦闘しながら彼らと行動を共にしていましたが、今年は担当が変わり賄いを任せられました。
永平寺(福井県永平寺町)での修行の際、100名以上の修行僧の食事を作らせていただいたことはありますが、修行僧とは異なる小学生に一体どのくらいの分量を作るとよいか、どのような味付けにするとよいか、等の疑問を抱きました。 食事準備の流れを前任者に伺ったり、昨年の資料を見ながら準備をいたしました。

 私が暗中模索している中、このような出来事がありました。 私がこの禅の集いで賄いを担当することを知った永源寺の檀家さんが、自分の家の畑で取れた多くの野菜を提供してくださったのです。 また当日には、寺族の皆さんが夕食のメニューがカレーライスの時に、野菜の切り込みの手伝いに駆けつけて下さったのです。 これらのことは、大人の皆さんが地域の子供たちに対して深い愛情を抱いていることを垣間見た風景でした。

 食事の時間になって、子供たちはカレーライスをむしゃむしゃと食べました。 彼らは次々とお代わりをしたため、青年会僧侶や寺族の皆さんのカレーライスがなくなってしまいました。 きっと子供たちは、プール遊びでおなかが空いたのでしょう。 賄い担当の私としては、その様子を見て今までの苦労がいっぺんに吹き飛んでしまう思いでした。

 私たちは、今年の禅の集いにおいても食前に五観の偈(ゴカンノゲ)を唱えました。
『一つには功の多少を計(はか)り彼(か)の来処(らいしょ)を量(はか)る
二つには己が徳行(とくぎょう)の全欠(ぜんけつ)を{と}はかって供(く)に応(おう)ず
三つには心(しん)をふせぎ過(とが)を離(はな)るることは貪等(とんとう)を宗(しゅう)とす
四つには正に良薬を事(こと)とするは形枯(ぎょうこ)を療(りょう)ぜんが為なり
五つには成道(じょうどう)のための故に今(いま)此の食(じき)を受く』

意味は次のようなことです。
一つには・・ 一つの料理ができるまでに携わった人々の苦労や、他の生命に支えられ生かされていることに感謝する。
二つには・・ 自分が食べ物をいただくに値する徳行を積んでいるか、反省する。
三つには・・ 心を正し、貪りの心を起こさないことを誓う。
四つには・・ 身心の健康を保つためにいただく。
五つには・・ 道を修めるための食べ物であることを自覚していただく。

 私は、今回の禅の集いにおいて賄いを任せられた当初は、手順や食材の分量など全く分からず戸惑う毎日を過ごしました。 しかし、この行事を成功させようと協力してくださる方々に助けられ、何とか二日間の賄いの役を無事につとめ終えることができました。 どれほど多くの人々の協力の下に一つの料理が出来上がるか、そして私自身もまた、どれほど多くの人々に支えられて生かされているか、この行事を通して痛感させられました。 食事をいただく時、料理をする時、また毎日の生活においてもこの五観の偈の教えを実践できるよう、これからも精進してゆこうと思いました。
 会場主の隆国寺様、但馬曹洞宗青年会をはじめとする関係寺院、寺族や檀信徒の皆様、参加した小学生の皆さん二日間お疲れ様でした。


参加者は食前に五観の偈を唱えました


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