圭秀の修行日記2009/02/20

 「除夜の鐘」を振り返って

 大晦日といえば年越詣、年越そば、除夜の鐘等が挙げられます。 日本の多くの寺院では、除夜の夜半に百八煩悩を除く意をこめて108回鐘を撞く、除夜の鐘撞きの行事をしますが、永源寺においてもこの行事は昔から受け継がれてきました。

 この行事にお参りされる参拝者の数は、一昔前は決して多いとはいえず、同じ方に何度も撞いていただきながらどうにか108回の鐘を撞き終えていました。 しかし、ここ数年、参拝者は徐々に徐々に増え続け、大人から子供まで鐘楼堂の下に順番待ちの行列ができるようになりました。

 また、鐘を撞く回数も肝心なことですが、今思えば悠長なやり方をしていたものです。 鐘を数えるために108個の豆を用意し、1回撞いたら1個の豆を隣の箱に移す方法を取っていました。 しかし、真冬の真夜中に1時間以上も外に立っていますと、寒さに加え睡魔と空腹に襲われるため、口元が寂しくなってくると本来数を数えるべき豆をついつい無意識のうちに食べていました。 次々と打ち鳴らされる鐘の音を聞きながら、自分の口の中で噛み砕かれる豆に気付く頃には、さて今の鐘は何回目の鐘か、分からなくなっていました。 そこで、その苦い経験から「除夜の鐘カード」というのを考えました。 そのカードとは、永源寺の鐘楼堂の写真が印刷された絵葉書です。 108枚の絵葉書の下部には1から108までの番号が記されており、参拝者が鐘を一回撞いた後、私がその絵葉書を一枚渡すのです。 2,3年この方法を続けたところ、意外にもこの絵葉書が評判となり、参拝者はこぞって絵葉書を求めるようになりました。 面白いことに参拝者は前年よりも少しでも若い数字のカードを希望し、鐘撞きが始まるやいなや先を争って鐘楼堂の下に集まるようになりました。

今までの様子を知る年配の方には、
「以前は、私ひとりで4回も5回も鐘を撞いていたが、今では撞くことさえできない。 参拝者が増え、若い世代も多くなり、実に良いことだ。」
と、お褒めのお言葉をいただくようになりました。

 絵葉書を作成する時には、いろいろな方のご意見を参考にしながら写真を選択しますが、撞き終った子供に絵葉書を渡した際、「きれいな絵はがき、ありがとう」といわれると私も嬉しくなります。 そして、「また、来年も来てね」と言葉を返しながら次回はどのような絵葉書にしようかと考えるのです。 実際のところ、絵葉書を得た参拝者の大半は投函せず、記念として保存されるようですが、今後さらに大晦日のこの行事が盛り上がるように工夫を凝らしてゆきたいと思います。


戻る