圭秀の修行日記2007/10/27

高祖様に拝す

 10月25、26日の二日間、兵庫県第二宗務所主催の大本山永平寺(エイヘイジ※)研修会が行われました。 但馬、丹波両地区の寺院を中心として僧侶と檀信徒合わせて200名以上が本山での研修会に参加しました。 またこの機会に、御誕生寺(ゴタンジョウジ※)・瑩山禅師誕生地顕彰碑参拝や、越前市にある「めがねの里」の見学を行いました。
 今回の研修会では、多くの御寺院様や檀信徒の皆様と触れ合うことができ、また、本山では偶然にも永平寺での修行時代の仲間とも会うことができました。 また、御誕生寺様を参拝する機会をいただき、仏教にまつわる見聞を広げることができました。 今回の研修会は殊の外有意義なものでしたが、その中でも特に印象深かったのは、承陽殿(ジョウヨウデン※)から見た満月でした。

 私は10月上旬に嗣法(シホウ※)の儀式をつとめさせていただきました。 私はありがたい儀式を無事に終えることができたことをとても光栄に思っています。 将来、永平寺に拝登できたら高祖様(コウソサマ※)に感謝のお拝をしたいと思っていました。 すると、その願いは意外にも早く叶えられることとなったのです。 師匠が、ありがたいことに今回の研修会への参加を勧めてくださったのです。

 私は、夜の坐禅が始まる前、案内役の雲水(ウンスイ※)と承陽殿に向かいました。 真っ暗闇の中、ぽーっと浮かび上がる承陽殿の中では真行(シンナン※)が法要の練習をしていました。 承陽殿前に立つと、足元ではコオロギが声高らかに鳴き、日中の賑わいとは正反対の情景でした。 その中、ゆっくりとお拝をしました。 永平寺修行中は承陽殿での法要によく随喜(ズイキ※)させていただき、何度となくお拝をしましたが、夜に一人でお拝をするというのは初めての経験で、今まで味わうことのなかった心地よさを感じました。

 無事にお拝を終えて、次に坐禅堂へ向かうために後方を振り返った時のことです。 私は素晴らしい風景を目にすることができました。 それは、煌々と光り輝く満月が、私の真正面で吉祥山の木々の間から承陽殿を照らしていたのです。 私は月と高祖様に挟まれながら、しばらくの間その美しさに見とれ、立ち尽くしてしまいました。 まさに高祖様が月を正面にご覧になり坐禅をされているかのように思えたからです。 私はこの美しい満月を高祖様からの贈り物ではないかと思うほどでした。
 1泊2日の参拝でしたが、体調を崩す人がいなかったのは嬉しいことでした。 参加者は、帰りのバスの中で今回の様々な体験を語り合っていました。 次回の研修会にも是非参加したいという檀信徒の声を耳にし、私たち僧侶も内心嬉しく思いそっと胸をなでおろしました。 私自身もまた機会があれば参加させていただきたいと思いました。 兵庫県第二宗務所長様をはじめとする関係御寺院様、檀信徒の皆様、二日間お疲れ様でした。

承陽殿 回廊急いで 駆け上がる 大師に拝す 満月の夜

(備考)
※ 永平寺:福井県吉田郡永平寺町志比にあり、曹洞宗二大本山の一。山号は吉祥山。
※ 御誕生寺:越前市にある寺。板橋興宗禅師住職。
※ 承陽殿:御開山(道元禅師)御真廟のこと。
※ 嗣法 :釈尊が摩訶迦葉尊者に付嘱して後、代代面授印証して今日に至る法続を嗣続すること。
※ 高祖様:道元禅師(1200〜1253)。鎌倉期の僧で、永平寺開山、日本曹洞宗の開祖。京都の人で、内大臣久我道親の子。「正法眼蔵」「普勧坐禅儀」「典座教訓」等の諸巻を説き示した。
※ 雲水 :修行僧
※ 真行 :承陽殿に侍する修行僧
※ 随喜 :法要に助力すること。

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