圭秀の修行日記2007/07/26

子供たちとの禅の集い

 7月24、25日の二日間、隆国寺(豊岡市日高町)様にて但馬曹洞宗青年会主催「小学生のための禅の集い」が行われました。 二日間の日程は、下記の通りです。

   =24日=    =25日=
10:30  開講式 
 自己紹介
 坐禅@
5:00  振鈴(起床)
 洗面
12:00  中食(チュウジキ:昼食) 5:30  坐禅B
 朝課(朝のおつとめ)
13:00  写真撮影 
 プール遊び
 坐禅A 
6:30  ラジオ体操
 作務 (サム:掃除)
 18:00  晩のおつとめ 7:30  小食(朝食)
 18:45  薬石(ヤクセキ:夕食)
 レクリエーション(花火大会)
8:30  レクリエーション(宝さがし)
 坐禅C
21:30  開枕(カイチン:就寝) 10:30  閉講式


 私は、平成13年からこの集いのお世話をさせていただいているのですが、正直なところ小学生と寝食を共にするというのは並大抵なことではありません。 多数の小学生を相手に行事指導をするかたわら、昼夜を問わず子供たちの健康状態にも気を配らなければいけません。 二日目ともなると肉体的にも精神的にもくたくたになってしまいます。 さらに今年は困ったことに、例年指導していた数名のベテラン僧侶が、急なおつとめ等により当日の参加が不可能となり、世話をする僧侶や寺族が例年より少なくなったのです。 私は、この集いが始まる前から今年はどうなるだろうか、無事に終えることができるだろうか、と疑問を抱きつつ禅の集いは始まりました。

 毎年、この集いに関わっていると、魔の時間帯があることに気付きます。 それは、大体薬石(ヤクセキ:夕食)の後です。 プールで大はしゃぎをしてお腹を空かせた子供たちは、カレーライスをお腹いっぱい食べてお腹を壊してしまうのです。 また夜が更けるにつれ、ホームシックになり、ワンワンと泣く子供が現れます。 彼らに数人の僧侶が付き添う為、人手が足りなくなるという訳です。 その状況でも予定通りに行事を進めなくてはいけません。 魔の時間帯とは、まさに私たちの日頃の修行の成果を問う時間帯です。

 私は、主に本堂での行事を担当しました。 そのため、おつとめや坐禅の指導をする機会が多くなりました。 食事の準備のため、世話人が台所に集まると、本堂に留まる僧侶はめっきり少なくなります。 時には私一人で坐禅指導をすることもありました。 そのような時に限って、坐蒲(ザフ)を一人ずつ配っていると泣き始める子供、おしゃべりを始める子供、本堂内を走り回る子供が現れ頭を抱えました。 例年ですと、数名の僧侶が一斉に大声を出して子供を静めるのですが、その時の私には、100名以上の子供を相手に大声を出してまとめるだけの気力は残っていませんでした。 そこで私は今までのやり方を変えてみました。 子供たちの全体の様子を見ながら、落ち着けない子供たちを一人ひとり教え諭すように話しかけ、坐禅の時間でなくとも正座をさせて一緒に呼吸を整えるようにしました。 すると、子供たちは徐々に落ち着きを取り戻し始めたのです。 また、不思議なことも起こりました。 坐禅の時間を延ばしても子供たちは集中して坐れるようになり、自ら警策(キョウサク)を求める子供も増えました。 どういうわけか子供たちは大変身を遂げたのです。

 子供たちの変身のお陰もあり、無事に今年の禅の集いを終えることができました。 終わってみるとあっという間の二日間でしたが、終了証を手にした子供たちは、迎えにきたお父さんお母さんの下へ一目散に駆けてゆきました。 そのような中、数人の子供が私の下に寄ってきました。 そして、「ありがとうございました」とお礼を言ったのです。 「来年また会いましょう」と約束して別れましたが、この子供らからの一言は私にとって大きな力となりました。 私は、今までこの禅の集いで個人的にお礼をいわれたことがなかったので、この「ありがとうございました」の一言で私の疲れは吹き飛んでしまいました。

 昨年までは子供たちが騒いで収拾がつかなくなると、数人の僧侶が大声を出して、おしゃべりをする子供たちと大声競争をしていましたが、子供をまとめる別の方法があることを知りました。 どのような形で接すると子供との意思疎通ができるか、このことを考えながら実践してゆくのが私たち青年会の修行なのです。 たとえ子供を世話する僧侶の人数が少なくともやり方次第で壁を乗り越えることができることを知りました。

 他の行事では影を潜めていたのに、プールに入った途端、龍の水を得るが如く大はしゃぎする子供。 ホームシックで泣き出す女の子、そして彼女を慰める友達。 腹痛のため休憩室で休む弟と彼を見守る兄。 しどろもどろの1年生と彼らを世話する禅の集い常連の6年生等など・・ 様々な子供たちと共に学び、遊び、笑い、悲しみ、教えて教えられた禅の集いでした。 会場主の隆国寺様、但馬曹洞宗青年会会長をはじめとする関係寺院、寺族の皆様、参加した小学生の皆さん二日間お疲れ様でした。

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