圭秀の修行日記2006/09/18

動物との共存 

 数年前より山にいる獣が、餌を求めて人里まで下りてくるというニュースをよく耳にします。 それらは畑の作物を荒らし、時によっては人に危害を加えています。 そのような状況は永源寺周辺においても例外ではありません。

 山号が鹿苑山(ロクオンザン)ということもあり、以前から鹿の鳴き声を裏山でよく耳にすることはありましたが、獣が餌を求めて人里まで下りてくることはありませんでした。 しかし、数年前より養父市一帯において猪や鹿などが人家の近くまで下りてくるようになったのです。
 お寺に関する被害はといえば、猪がお寺の横を流れる小川に棲む沢蟹や、境内のコケの下にいるミミズを求めて土を掘り起こしたり、鹿が墓前のお花をすべて食べ尽してしまったことなどがあげられます。 ご法事のために、前日に供えたお花は一夜のうちに食べられ、茎だけが残されていました。 更には、獣の体に寄生しているヒルの被害も増えました。 事の重大さを心配した寺役員様が、境内に鉄柵を張り巡らしてくださり、お陰で猪の被害はほとんどなくなりましたが、これらはお寺のみならず各家庭においても厄介な問題となっています。

 私は毎月、山にへだらを採りに行きますが、一度、体長1メートルほどの猪とばったり出くわしたことがありました。 鈴を鳴らしながら歩いていたものの、岩陰で死角に入っていたため、餌を探すことで夢中になっていた猪も私に気が付かなかったようです。 お互いの距離が、数メートルの所でようやく気が付きました。 その時は、猪の方が私を恐れて山奥へと逃げていったので難を逃れましたが、急な崖の斜面でも一直線に駆け上る後ろ姿を見ながら猪の凄さに驚き、仮に猪が私の方に向かってきたらとんでもないことになっていただろうと思いました。 それ以来、山に入る時は鈴と携帯電話を必ず持参し、愛犬パティ (※1)をお伴させるようにしています。 パティのリードを外し、私の前を歩かせます。 数十メートル先に獣がいても、パティが耳をそばだて、獣の有無を教えてくれるからです。 パティのお陰で目には見えない視野が広がりました。

 人里での獣による被害は、毎年増えています。 被害を防ぐため、柵を張り巡らしますが、獣は他の土地に移動し、いたちごっこの状況が続いています。 人間にとって厄介な問題ですが、獣にとっても人里まで下りてこなければ食べ物にありつけないというのは、深刻な問題だと思います。
 お寺では、中食(チュウジキ※2)の際、生飯(サバ※3)を取ります。 これは、施しをするためです。 庫裡裏の生飯台に置かれた生飯は、いつの間にかなくなっています。 人間同様この世に生まれたその他の動物が、お互いの領域を必要以上犯すことなく共存できるようになって欲しいと願っています。
(備考)
※1パティ:マハープラジャーパティ(お釈迦様の義母の名)。5年前、私の永源寺上山3日後に米子市からお寺にやってきたラブラドールレトリバーのメス犬。
※2中食:昼食のこと。
※3生飯:食事の際の飯を少し取り分けて鬼神や鳥獣に施すこと。


愛犬パティ

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