子供たちと永平寺へ
 7月27日、28日の2日間、但馬曹洞宗青年会主催の「禅の集い」(子供坐禅会)が福井県にある大本山永平寺で行われました。 但馬各地より合計40名以上の小学生が参加し、1泊2日の日程で禅の修行を体験しました。 おおよその日程は下記の通りです。
1日目: 8:30八鹿出発〜15:15大本山永平寺到着
2日目: 8:30永平寺下山〜門前にて買い物〜10:00福井県立恐竜博物館〜18:00八鹿到着
 永平寺へ向かうバスの中では、子供たちが元気はつらつ、お寺での修行に胸を膨らませ、ガイドさんが紹介するゲームや、問いかけに我先にと大声で答えていました。 中でも特に人気だったのは、「似顔絵ゲーム」という遊びで、ガイドさんそっくりの似顔絵を描くというものです。 バスの最後尾の小学生4人に画用紙とマジックを配り、縦の列ごとにガイドさんの指示に従って、目、鼻、口、顔の輪郭・・ と一人一つずつ描きながら前の人に渡してゆき、似顔絵を完成させるというものです。 最後に4枚の似顔絵とガイドさん本人を比較しましたが、列ごとの個性が表れ、バスは笑いの渦に包まれました。
 数々の楽しいゲームのおかげで時間があっという間に過ぎ、気が付くと永平寺に着いていました。 私たちは、真っ青な空の下、青々と生い茂った木々に囲まれながら一歩一歩境内に足を踏み入れました。 つい先ほどまでバスの中で大笑いしていた子供たちが、どの子も心が自然と落ち着いてゆくように見てとれました。 永平寺での日程は下記の通りです。
  
    
      | 1日目 |  | 2日目 |  | 
    
      | 15:15 | 到着・記念写真 | 3:20 | 振鈴(シンレイ:起床)・洗面 | 
    
      | 15:50 | 開講式 | 3:50 | 坐禅 | 
    
      | 16:30 | 入浴 | 5:00 | 朝課(チョウカ:朝のお勤め)・諸堂拝観 | 
    
      | 17:30 | 薬石(ヤクセキ:夕食) | 7:00 | 小食(ショウジキ:朝食) | 
    
      | 18:30 | 坐禅 | 8:00 | 閉講式 | 
    
      | 19:00 | お話 | 8:30 | 下山 | 
    
      | 20:00 | 映画 |  |  | 
    
      | 20:30 | 布団敷き |  |  | 
    
      | 21:00 | 開枕(カイチン:就寝) |  |  | 
  
 丁度この時、京都曹洞宗青年会主催の子供坐禅会が同じ日程で行われていましたので、食事や坐禅は一緒に勤めました。 子供たちは初めての永平寺に緊張しながら、また200人以上での集団行動に戸惑いながら、行持(ギョウジ※)をつとめていましたが、時間の経過と共に少しずつ慣れてきた様子でした。 そして、午後9時の開枕(カイチン※)時刻にはすぐに寝入ってしまいました。
 翌朝は午前3時20分に起床し、眠い目をこすりながら朝の坐禅、法堂(ハットウ※)での朝課を勤めました。 朝課では100人以上の僧侶が読経する中、その僧侶の前を通って須弥壇(シュミダン※)前まで行き、一人ずつ合掌礼拝致しました。 低声に読経する多勢の僧侶に挟まれながら、法堂の真ん中を歩くというのは大人でも緊張しますが、やはり子供たちは緊張した面持ちで、前の人にぴったりとくっつきながら黙々と歩いていました。
 その後、各伽藍を拝観しました。 案内役の修行僧が私たちを先導し、広い境内をゆっくりと歩きながら七堂伽藍(シチドウガラン※)を説明してくださいました。 子供たちが特に関心を持ったものは、大庫院(ダイクイン※)前にある巨大擂り粉木棒でした。 修行僧からこの棒に触ると料理が上手くなると説明を受けた子供たちは競ってなでていました。
 小食(ショウジキ)をいただき、閉講式が終わる頃には、子供たちは永平寺の雰囲気にすっかり慣れていました。 もう少し拝観したいという子供もいましたが、名残惜しい気持ちを抑えつつ永平寺を後にしました。
 私たちはその後、勝山市にある福井県立恐竜博物館を見学しました。 この博物館は国内最大の恐竜博物館で、福井県で発掘された恐竜の骨をもとに資料を展示しています。 「恐竜の世界」「地球の科学」「生命の歴史」の3部分にわたり千数百点もの標本や大型復元ジオラマがあり、それらを実際に見ることで昔の生物の様子を知り、恐竜の大きさを実感することができました。  子供たちにとっても興味深いものが多かったのでしょう、3階建ての博物館内をあちらこちらと歩き回っていました。 とくにお土産コーナーは、恐竜のおもちゃに引き寄せられた男の子たちによって混雑していました。 彼らは、それぞれに財布を開けてお小遣いの残りとにらめっこしていました。
 その後私たちは、帰途に着きました。 往路とは違い、車内がしーんと静まり返ったバスは、一路但馬を目指しました。 お蔭様で交通渋滞もなく、天候にも恵まれほぼ予定時刻に帰ることができました。
 今回の永平寺拝登では、同時期に共に修行した同安居(ドウアンゴ)にも会うことができ、3年前の想い出がよみがえりました。 修行を終えてからも再び拝登できたことに大変感謝し、道元禅師様をはじめとするお祖師方や、当時御世話になった方のご恩に報いるために、これからも精進してゆこうと思いました。 最後に、参加した子供たちが永平寺での感動をいつまでも大切にし、将来大きく羽ばたいて欲しいと思います。
(備考)
※	行持:行は修行、持は護持・持続の意。修行が連続し実現している、佛道修行者の努力のあり方
※	法堂:住職が仏にかわって修行者のために説法するところ。
※	須弥壇:本堂の中央にある、仏像などを安置する壇で、須弥座ともいう。
※	七堂伽藍:禅宗寺院が7種の堂の配置によって成り立っている意味で、法堂、仏殿、山門、僧堂(坐禅堂)、東司(御手洗)、庫院(庫裏)、浴司(浴室)からなる。
※	大庫院:永平寺の台所。修行僧の食事を作る場所。