2004/04/15

永平寺先輩和尚から
ありがたき御恩をいただき


 午前中「大観音」という観音様の法要があり、午後には養父市内でお葬式があって忙しくとても疲れたという日がありました。しかし、そんな日にはなぜか予期せぬ良いことがあるものです。

 お葬式が終わり永源寺へ帰ると、一つの小包が届いていました。それは大本山永平寺で飯頭(ハンジュウ:典座の下に属し、大衆の粥飯の世話をする役)を務められている大久保さんからのものでした。小包の中身は「砂糖を使わないケーキの作り方」という本と果物用ペティーナイフ、そして一通の手紙でした。

 手紙には次のように書かれてありました。
「あなたにケーキの作り方を教えられなかったため、この本を送ります。」――
私は「はっ」と気が付きました。大庫院(ダイクイン:永平寺の台所)で修行させていただいた際、大久保さんに一度だけ豆腐ケーキ(卵やバターなどを一切使用しない精進ケーキ)を作っていただいたのですが、そのなんともいえない美味しい味が忘れられず、そのケーキの作り方を教えていただこうとお願いしたことがあったのです。しかし都合が付かないまま、結局私は今年の2月に送行(ソウアン:修行を終え下山すること)したのでした。大久保さんは、以前私がケーキの作り方を教えて欲しいとお願いしていたことを、まだ覚えておられたでした。永平寺で教える機会がなかなか見付からなかったので、この本を贈って下さったのでした。私はとてもありがたい気持ちに包まれました。

 大久保さんは現在も大庫院で雲水(ウンスイ:修行僧)の食事の世話をしておられますが、私にとって大久保さんのもとで料理に関する修行をさせていただいた4ヶ月は、とても有意義なものでした。私は大久保さんの御恩に感謝するとともに、良い縁に恵まれたことに感謝しました。

 私は今、永源寺(兵庫県養父市)の手伝いをさせていただきながら、智源寺専門僧堂(京都府宮津市京街道)で修行しているかたわら参禅者の世話もしています。諸先輩から受けた御恩を少しでもお返しできるよう努力してゆきたいと思います。

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