2003/08/10

永平寺での半年間を振り返って

 緊張のためにガタガタと震えながら山門をくぐった2月21日。 あの日から5ヶ月が過ぎました。 私にとってこの期間はとても有意義なものとなりました。 なぜかと申しますと、いろいろなことを勉強することができたからです。 坐禅や僧堂飯台(ソウドウハンダイ:坐禅堂で坐禅をしながらの食事)作法はもちろんのこと、托鉢や多くの法要に随喜(ズイキ:参加)することができたためです。

 また、私は3月13日から7月13日まで永平寺の台所といわれる大庫院(ダイクイン)という寮舎で修行させていただいたのですが、お山(永平寺)の精進料理についても学ぶことができました。 肉や魚を一切使用しない料理を毎日150〜200名分作るのですが、はじめのころはその分量と料理の作り方に抵抗がありました。 しかし、慣れないながらも典座老師(テンゾロウシ:大庫院の管理者)や古参和尚(コサンオショウ:先輩和尚)の指示に従いながら一品一品料理するにつれ、手順が徐々に分かってきました。 僧堂飯台の際ボリボリという噛む音が出ないように、透き通るほど薄く切らなければならない香菜(コウサイ:たくあん)切りから始まり、飯の炊き方、大鍋でのさまざまな汁の作り方、煮物、炒め物、酢の物、おひたし等など・・ お山の味を一通り学びました。

 幸運なことに、お授戒(ジュカイ:佛の戒法を授けて佛位に入らしめ、佛祖正伝の血脈を授与すること)時には飯炊き専任者に選ばれ、400〜500名分の飯炊きを一人でまかなうことができました。 ふだんは麦入りの飯を炊くのですが、お授戒時には炊き込みご飯が多かったため、皆様のワンポイントアドバイスを聞きながら、シメジ、五目、竹の子御飯等を作らせていただきました。 朝、昼、晩合計して一日平均十斗の米を炊き続けたのは非常に辛かったです。 睡眠時間が30分の日もあり、御飯まみれで汗びっしょりの七日間でしたが、随喜寺院様、戒弟の皆様、そして雲水の皆様に
「今日の御飯、おいしかったよ」
といってもらえると、それだけで疲れがとんでしまいました。 大庫院でお授戒を迎えるというめったにないご縁に結ばれたことに感謝すると共に、非常に良い経験をさせていただいたと思います。

 6月には木の芽拝登(高祖様が亡くなる直前に京都へ向かわれた際のルート)、7月には白山拝登(高祖様と白山には深い関係があります)と、高祖様(道元禅師様)の足跡をたどることができました。 高祖様は一日の生活すべてが修行だとおっしゃっておられます。 少しでも高祖様に近づけるよう、拝登を無駄にしないためにも、これからもお山での生活のその時その時を大切にしてゆこうと思います。


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