2003/03/16

 脚気(カッケ)との戦い

「永平寺に行ったら脚気には気を付けなさいよ」
上山前に、諸先輩方からこのようなアドバイスをいただきながらも、気が付いた時には私にもこの病気が襲い掛かっていました。 手足がむくみ、指で押してもなかなか元に戻らない。 また、正座の際しびれやすくなり、東司(トウス:お手洗い)が近くなるといった症状がでていました。 脚気とは、ビタミンBの欠乏による栄養失調症の一つで、永平寺の食生活に順応できずこの病気になってしまったのでした。 また2月21日の上山以降、雪深い永平寺の厳しい寒さに、手足が荒れていました。

 これでは大庫院(ダイクイン:永平寺の台所)の公務ができないと、副典座老師が私を含めた脚気患者を病院に連れて行ってくれたのでした。 みんな手足や顔のむくんでいる人ばかりでした。 それぞれ診察を受けましたが、「動物性タンパク質とビタミン不足」という同じ回答が返ってきました。 私はまだ症状の軽い方だったらしく、ビタミン剤と軟膏をいただくのみでしたが、他の人たちは入院となってしまいました。

 暫到(ザントウ)期間中は、薬を永平寺で買うこと、師寮寺より送ってもらうことができません。
「一日も早く体を永平寺の食事に慣らすよりほかない。 炭水化物である御飯の量を減らすとか、作務を頑張って運動量を増やすなどしてみてはどうだ。」
副典座老師は、帰りの車の中でこのように励ましてくださいました。 暫到期間中の医療費は永平寺もちになるため経済面では助かりましたが、この病気をどのように乗り越えようか考え込んでしまいました。

 しかし、大庫院に戻ると嬉しい出来事が待っていたのでした。 古参(コサン:先輩の修行僧)和尚さんが私たち暫到和尚のビタミン補給のために生野菜を切って下さっていたのでした。 また、他の寮舎(リョウシャ:修行僧が住する寮)には内緒で牛乳を飲ませてくださいました。 飯頭(ハンジュウ:大庫院での一つの役職)さんには
「手荒れが治るまで水洗いはしなくともよい」
といわれました。 非常にありがたいと思いながらも、皆様に迷惑をお掛けしたことを申し訳なく思いました。 そして、早くこの病気を克服しようと思うのでした。

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