2002/12/10

 人生の幅

 お釈迦様は苦しい坐禅修業の末、12月8日の明けの明星を見て無上のお悟りを開かれました。 これを「成道(ジョウドウ)」といいます。
 全国の曹洞宗寺院ではお釈迦様の恩に報いるために成道会(ジョウドウエ)という法要を執り行います。 永源寺でもこの日、法要を執り行いました。

 先ず、簡単に成道会の流れを説明したいと思います。
 法要は梅花講員による「三宝御和讃(サンボウゴワサン)」のお唱えで始まり、お唱えと共に導師さまが入堂し、お釈迦様に対して三拝してから、蜜湯・お膳(小豆粥)・お菓子・お抹茶の順で、献供(ケング:お供え)しました。 その間、梅花講員の皆様には「花供養御和讃・御詠歌」「大聖釈迦無尼如来御詠歌(ダイショウシャカムニニョライゴエイカ)」をお唱えしていただきました。 献供が終わると、「大佛頂萬行首楞厳陀羅尼(ダイブッチョウマンギョウシュリョウゴンダラニ)」というお経を読経し、梅花講員が「大聖釈迦如来成道御和讃・御詠歌」をお唱えしました。 そして回向(エコウ:自己の修めた善行などの功徳を他にめぐらして、自他共に仏果を成就しようと期すること)の後、再び三拝し「聖号(ショウゴウ)」のお唱えと共に法要は無事終了しました。

 この日はあいにくの雨模様の天気でしたが、50名近い梅花講員、参拝者の皆様に参列していただきました。 毎年、永源寺では成道会の後大根煮をいただくのですが、今年も皆様と大根煮をいただきました。 前前日より調理させていただきましたが、私は檀家さんがこの日のために自分の畑で丹精こめて作ってくださった大根の皮むきや面とり、米のとぎ汁での下ゆでなどをしました。 当日は厚さ1.5センチほどの大根2枚と油揚げ1枚のセットを給仕させていただいたのですが、寒い日だったということもあって、皆様はいただきながら「体が温まるね」といっていました。

 この日、私の心の中で一番印象に残ったことは "深みを増す" ということでした。 法要終了後に方丈さまがご法話をしてくださったのですが、「生きる上で深みを増せるよう努力することは大切だ」とおっしゃいました。 そして深みを増せば増すほど、その人の動作、言動に重みが備わってくると言及されました。
 "人生の長さは大体決まっているけれど、その人生の幅を決めるのは自分である" ことを方丈さまのご法話を聞いて再認識させられたからです。

 お釈迦様は29歳で出家され、真理を深く追求するために6年間、苦行されました。 そして仏陀(ブッダ)となられました。 私も一介の僧侶となった今、これからの人生の中で少しでも深みを増してゆけるよう精進してゆこうと思いました。


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