2002/09/01

お盆を終えて

 8月は一番忙しい月です。 お盆の月ということで多くの法要を執り行うからです。永源寺では1日〜6日まで夜施食会、8日〜13日まで棚経(タナギョウ)、15日に山門大施食会・初盆会供養、24日に地蔵供養というスケジュールで法要を行います。また、他の御寺院様の施食会や各地区の地蔵盆の法要にも携わります。

 施食会とは餓鬼世界に堕し、飢餓に苦しめられている生類または無縁の亡者に飲食を回施する法会のことです。 釈尊(シャクソン・お釈迦様)の弟子の目蓮尊者(モクレンソンジャ)が餓鬼道(ガキドウ)に堕ちて苦しんでいる母を救うために、修行が終わり罪を懺悔告白する7月15日に、修行僧たちに百味五果の食事を供養して、その功徳で母を餓鬼道の苦しみから救ったことが盂蘭盆(ウラボン)供養・施食会の起源になったといわれています。 今年は6日間で341軒の檀家の皆様にお参りしていただきました。 一緒に「大悲心陀羅尼(ダイヒシンダラニ)」、「甘露門(カンロモン)」、「修証義(シュショウギ)」などのお経を読経し、三界萬霊(サンガイバンレイ)とご先祖様の供養を致しました。

 棚経とは、盂蘭盆会(ウラボンエ)に、各家庭の精霊の前で僧がお経を唱えることです。 他の御寺院様にも協力していただきながら、お檀家さんの家をまわってお経をお唱えしました。

 山門大施食会・初盆会供養では、三界萬霊を供養すると共に、昨年のお盆から今年のお盆までの一年間に亡くなられた新亡(シンモウ)の仏様を供養します。 今年は200人以上の参拝者が本堂に参集したために大変混雑した法会となりましたが、無事に終えることができました。

 地蔵供養とは、地蔵信仰と盂蘭盆の行事が結びついて行われるようになった民間習俗で、旧暦7月24日に行われ、地蔵会・地蔵祭りともいいます。 近畿地方では8月23日〜24日に各種の行事が催され、町内に祀られているお地蔵さんの前に灯明・提灯をともし、時節の食べ物をお供えします。 永源寺では施食会を行った後、檀家の皆様と一緒に「仏説延命地蔵菩薩経(ブッセツエンメイジゾウボサツキョウ)」をお唱えしました。

 今年は20日以上も雨の降らない日が続くほど蒸し暑いお盆でしたが、私はとても有意義に8月を過ごすことができました。 それはなぜかというと、昨年のお盆終了後に、私にいくつかの問題点が課せられたのですが、それらが少し改善されたからです。

 改善された点は以下のことです。
1. 法衣を身につけてうまく歩けなかった昨年に比べ、多少着こなしがうまくなった。
2. 棚経時、軒数を重ねても声がかすれなくなった。
3. 夏ばて気味だった昨年に比べ、体調を崩すこともなく体力を持続できた。
4. お経さんをスムーズにお唱えできるようになった。

 昨年は、7月29日に得度式(トクドシキ)を挙げて間もなくお盆を迎えたということもあり、慣れないことばかりで、何がなんだかわからないままお盆を終えたという感じでしたが、1年を通して自分に課せられた問題点を少しでも改善できるよう心掛けました。 水泳をして体力作りをし、読経の際に腹から声を出せるよう練習しました。
 問題が改善されるにつれ気持ちにも多少のゆとりができ、棚経の際に読経を終えた後、お檀家さんと楽しく会話ができるようになりました。 昨年より全体の流れを把握できるようになった今年のお盆でしたが、体力作り、読経の練習、法要の流れの把握など、まだまだ完璧ではないので今後も努力してゆこうと思います。

 永源寺では8月15日の早朝、御本尊様に蓮をお供えします。 今年もお檀家さんのご協力で、大きく美しい蓮の花がお供えされました。 お参りにこられた方も「こんな大きな蓮は見たことがない」と話していました。

 蓮を見ると私は、学生時代の恩師の言葉を思い出します。 その恩師は蓮の花が持つ意味を教えてくださいました。
「蓮という植物は不思議なもので、花を咲かせた時にすでに実を付けている。 花びらを現象にたとえると、その中の実は真実だ。 日々移り変わる現象も重要だが、その中にある不変の真実を見逃してはいけない。」

 毎日、めまぐるしい速さで変化しているこの世の中ですが、その世の中で決して変わることのないものを見落とさぬよう、精進してゆきます。
   

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